サルスベリ(2018.8.5 母)

暑い日が続く。

この時期に都会の路上に咲く花は少ないが,サルスベリは夏中咲き続けている。

昔は,田舎くさくて品のない花だとちょっと見下していた。

 

このところ,家から出たら日蔭を探しながら一目散でガレージに向かっていたが,先日,玄関を出てピンクの花びらが落ちているのが目にとまり,シラガシの隙間から自生して大きくなったサルスベリが,高いところで花を付けていたのに気付いた。

見上げると,狭いところにしっかり根を張ったサルスベリがシラガシのてっぺんより高いところで一人誇らしげに咲いている。何ヶ月も咲き続ける強靭な植物だけある,とちょっとおかしくて愛おしくなった。

 

そういえば,夫が亡くなった20年前の夏もサルスベリの花を何度も目にした。

入院先の病院から帰宅させ,最期の数週間を自宅で一緒に過ごしたが,じりじりと暑い日に咲き続けているサルスベリがまぶしくて,強い生命力をうらやましく思ったものだった。

 

でも,入院先の病院にいつも持っていっていたのは小花のひまわりだった。ちょっとおしゃれで,明るい色で元気をくれるような気がした。今は,病室に花を持ち込むのは禁止されていると聞くが,そのころ,病院近くの花屋さんは,花弁がおじぎしてしまわないよう,ひまわりの茎に細い針金を丁寧に入れて渡してくれた。

この季節,花屋さんには何種類もの小花ひまわりが並んでいて,あのころ,こんなにたくさん種類があったら,毎回いろんな花を選べたのに,と思ってしまう。

 

昨年9月には,尊敬する先輩が亡くなった。玄関先でサルスベリのピンクを目にするたび,先に逝った人々と過ごした時間に思いを馳せながら,おしゃれでなくても,花屋さんの手を借りなくても,こんな暑い日中でも咲き続けているサルスベリに本当はもっと敬意を払ってもいいのかもしれないかなと思う。