健康診断

健康は取り柄だと思ってきた。

満62歳になるまで,出産のときを除いて入院したことはない。それどころか病気や怪我で診察を受けたことも数回で,風邪をひいたり発熱したりして一日寝ていた経験もほとんどない。

 

しかし,先日の健康診断でついにひっかかった!

毎年,メニューはお任せだったが,今年は腹部エコーが追加されたという。胃カメラは気持ちが悪いから外していたが,エコーなら大した負担じゃないと思って初めて受けた。

ところが,戻ってきた資料の冒頭に,「腹部エコーの結果,5cm大の卵巣のう腫疑い,近日中に婦人科で確認を」と書いてあるではないか。

 

慌ててネット検索をする。信頼できそうな医師によるサイトを見ても恐ろしげな記事が多い。

「90%以上は良性」というのは,裏返せば10%近くは悪性ということではないか。

しかも,良性でも,肥大していき破裂したり捻じれたりして強烈な腹痛を発症することがあるという。

だから良性の場合にも手術が必要になることがあり,その目安は5~6cm大のものらしい。 わ! ぎりぎりだ。

手術の手法は,開腹手術か内視鏡手術。入院期間は1週間程度。回復には1ヶ月程度かかるとある。

 

最悪ではなくとも手術が必要になることがある??

1週間の入院中,母はどうするんだ!!

入院前には,いついなくなっても恥ずかしくないように身辺整理しなきゃ!

 

知り合いの医師に連絡して,手術はどの医療機関で受けるのがいいのか相談しようか。

それより,まず,子どもたちに連絡して,いつなら入院してもいいか尋ねてみようか。

 

思わず頭に血がのぼったが,少し落ち着いてから冷静に考えた。

とりあえず,黙って精密検査を受けるしかない,と。

 

 

健康診断結果の案内に沿って職場近くの婦人科に行き,再度エコーで細かく確認。

卵巣のう腫があることは間違いないらしい。良性なら抱えていく選択もあるが,悪性ならそうはいかない,悪性のものかどうかMRIと血液検査で確認しましょう,と穏やかに医師に言われ,採血された。

 

今日,そのMRIを受けた。聞いたことはあったが,これほど大掛かりな装置に身を委ねて我慢しないといけない検査だったんだ。

検査終了1時間後,結果を受け取ったものの,自分で見ることはできない。明日婦人科に持参して,医師の意見を聞く予定だったが,もう待てない。

予約を変更して,その足で婦人科に向かった。

 

 

医師から見せられたMRIの結果は,左側卵巣に約5cm大の腫瘤影があるが,「皮脂腺から分泌された脂肪成分として矛盾しない」とのことで,結果は良性。

「多分,若いころからあったものが見つかったんでしょうね」 と拍子抜けするコメント。

でも,当面手術は不要だが,安心はできないので,今後,3ヵ月ごとに通院して大きくならないかどうかを確認するよう勧められる。

 

なんだかなあ。

この2週間の緊張感が一気にゆるんだ。

 

もし悪性だと言われたら,見つけにくい癌がたまたま受けた腹部エコー検査で見つかったと幸運を喜ぶべきか?

MRIで判定不能と言われたら,曖昧な気持ちを抱えつつ手術のタイミングをはからないといけないのか?

中途半端な気分のまま,結果が分かるまで考えないようにしようと思いつつ,内心は揺れ動き,毎夜,おかしな夢ばかり見た。

 

 

健康に生きるために何をすべきか,年々情報が多くなっている時代。

しかも,すでに高齢者と言われる年齢に達している。

それでも,健康に悪いとされることをやめずに生きてきた。

いまさら,,と思っていたが,こんな出来事を経験すると,今まで何の問題もなかったことを改めて感謝し,病気で苦しんでいる人たちに申し訳ない気分になる。

 

もう少し待ってね。まだやりたいことあるから。

そんな思いを確認するために,3ヵ月ごとの診察を受けるのも悪くはないか,と思う。