ハノイ旅行 (2019.11.24 母)

1 10月30日から11月3日までハノイに滞在した。
  2017年3月に新聞社を退職して地方に在住しながら複数の仕事を始めた娘は忙し そうだが,日々楽しそうでもある。
  その仕事の一つがベトナム技能実習生を受け入れるということだと聞いていたが,具体的にどの組織でどのような活動をしているのかは知らなかった。
  母の介護を施設に委ねて自由になった私を娘が「見学してみない?」と誘ってくれたのをきっかけに,10年以上ぶりに海外旅行をすることになった。

2 日本の労働人口は減少を続け,対策を講じた結果,女性の雇用拡大で200万人,65歳以上の稼働人口200万人を増加させたが,それでも労働人口は450万人が減少しているということである。
  平成30年10月末時点の外国人労働者(約146万人)のうち「技能実習」の在留資格を持つ者は約31万人だというので,まだまだ足りない。入国管理法改正によって「特定技能」というより安定的な在留資格が追加されたものの,この資格によって受け入れている外国人はまだわずかである。

3 ハノイに行って初めて理解したのは,娘が所属している組織は「外国人技能実習機構」で,登録管理団体として許可されたところであるということ。
  そして,このような「受入機関」が,ベトナム等の国の「送出機関」と連携し,日本の企業で働きたいという希望を持ったベトナムの若者たちを選定し,「技能実習生」として受け入れるための支援をしているということ。

4 初日からさっそく,日本の道路関係工事を行う会社の募集に応じたベトナムの若者たちの面接に立ち会わせてもらった。
  みな意欲的で,片言の日本語で自己紹介を懸命にする様子は痛々しいとも思えた。ただ,胸に番号が書かれた大きなゼッケンをつけているのは,「日本ではありえないよね」と思う。
  3日目には,とび職として日本で働く若者たちの面接に立ち会う。1日目とは違う「送出機関」の事務所で,日本企業の社長がスカイプで面接の様子を見る。
  どちらの「送出機関」も立派な建物で,語学学校のようだ。でも,驚いたことに,日本語で自己紹介した若者たちは,現時点では1週間足らずしか研修を受けていないという。あの日本語をそんな短期間で覚えたなんてすごい。複雑なベトナム語で書かれた文字に圧倒されていた私は,心底若い人のパワーに感動した。
  採用された人たちは,今後,半年程度,「送出機関」で日本語研修等を受け,来日するという流れになるようだ。とび職で働きたいという若者たちが,面接の後,日本で働いている先輩とスカイプで話をして,「月給28万円なんてしんじられない!」と叫んでいた。先輩も気持ちよく働いている様子で,安心する。

5 外国人労働者たちが劣悪な環境で働かされている例を耳にすることは多い。
  でも,日本の労働人口が不足している事実,これをこのような方法で補っている事実,人手不足に悩む日本企業と日本で働きたいと思うベトナムの若者たちをマッチングさせ,両者にとってよりよい方法でこれを支援しようとする日本とベトナムの機関がこうして機能している事実は,もっと人々が知ってもよいのではないかと思った。

6 それにしても,娘はベトナムでも忙しい。ベトナムを訪問する日本企業の人たちを送迎する合間に,別の仕事の会議をスカイプでやっている。それでも,日本にいるときよりはリラックスできるという。
  3日間の滞在中,娘と二人で過ごせた時間はわずかだったが,その間に,喧噪のハノイの旧市街地を散歩し,味わい深い出汁と香り豊かな野菜が魅力的な食べ物を味わった。
  3日目の朝,甲高いクラクションの音で目が覚めた。最初は違和感があったが,すっかり耳になじんで,のどかな音に聞こえた。窮屈で小難しいことにとらわれている日本人より,この国の人たち,ずっと充実して希望にあふれた日々を送っているのかもしれないと思う。
  また,こんな活気に触れてみる機会を是非持ちたいと思いつつ,ベトジェットで帰国した。